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最近のフェラーリは…という言い方



最近のフェラーリは下品でバカっぽくて好きじゃない。
そんな言い方をする人がいます。
中には“の”と“フ”の間に“クソ”と入れたくなる、なんてひどいことを言う人さえ…。
まぁ私もそういう気持ちはよくわかります。ww

ENZOという車が発表された時、うわぁ、これはちょっとひどくないか…、
正直そう思いました。自分のまわりのデザイナー、同業者たちも同様な反応でした。
あのデザインが決定された経緯を後に知って、まぁそういうこともあるか…とは思いましたが、
それを知ったからと言って気が変わって好きになるというものでもありません。



458ITALIAは(前後のライトが好みではありませんが)結構いいと思いますが、
それ以外は全部、360MODENA(これも開発時のエピソードがひどい…)以降、
いいと思えるものがありません。

なんでこういうことになったのかな…と思うに、
結局はトップの好み、感覚が反映されているのだろうなと思います。
以前書いた“妥協するセンス”と表現してもいいかもしれません。
フェラーリ社のトップ、ルカ・モンテツェモロ氏の好み、センス…。
もう少し踏み込んでいうと、美しいとか、カッコいいというものの基準みたいなもの。
あと、誤解を恐れずに言えば、高いレベルを目指すこころざしとか、そういうものです。



デザインを担当するピニンファリーナ社の人材というか能力的なものも勿論あると思いますが、
フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリ氏が存命で、実際に指揮をとっていた頃は、
今よりもずっとピニンファリーナ社とセルジオ・ピニンファリーナ氏への信頼が厚く、
フェラーリ側が敬意を持って接していたのではないかなと思うのです。
デザイナーもレオナルド・フィオラヴァンティ氏をはじめ、冴えたメンバーが何人も在籍して
いましたし、同社全体としても絶好調の頃だったかと思います。

時は流れ、ピニンファリーナ社の能力は低下し、逆にフェラーリ社の業績は向上し、
両者の関係は変わっていきます。

クライアントを納得させられるアウトプットがなかなかできない、
クライアントからの要求は増える。しかもそれは良くも悪くもプロフェッショナルっぽくない。
たとえデザイナーが自身本当に良いと思うものを提案しても、
信頼が揺らいでいるし、クォリティ自体も最高レベルとは言い難く、中々承認されない。
何とかしようと、ある意味わかりやすい“今風”な処理が増える。
全体的なまとまりはある程度無視。強引にまとめる。
たとえ開発陣が心からいいと思っているものではなく、場合によって稚拙でさえあるが、
より多くの顧客を抱えるようになったフェラーリとしては、それは悪いばかりではなく、
むしろ一般的にわかりやすい、売りやすいものともなっていた。
そしてフェラーリ社の業績はずっと右肩上がり…。


考えると嫌ぁな気持ちになってしまうんですが、ものすごくはしょって言うと、
おおむねこんな事だったんじゃないかなぁと思うんです…。

こんなことを思うのは、エグイ方向で目立つのではなくて、
洗練されて目立つもの、ため息をつくほど美しいものが見たいからなんです。





F70にそういう期待をしてはいけないんだろうな…。

2013年02月24日(日) No.427 (車(マセラティ・クアトロポルテ、他))
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