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同業者の倒産(リーマンショックの頃の話)




2008年7月、同業者の会社が倒産した。
リーマンショックが“2008年9月15日に、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズが
破綻した出来事を、これが世界的金融危機の大きな引き金となった〜” ということなので、
その直前ということになる。
もうあれから結構たつわけか…。

前の会社にいた頃、何回か外注業者として使ったことがあり、独立してからはクライアントとして
仕事をいただいたりもしていた。
前の会社にいて外注業者として取引させてもらっていた頃は、正直なところあまりいい印象が無く、
積極的に使いたいとは思わなかった。特定の部品以外は全般的にクォリティが低く、その割に
値段がかなり高かったのだ。
そんな印象を持っていたので、こういうアウトプットを続けていてよく会社が続けられるものだな…
と妙に関心し、不思議な会社だなとさえ思っていた。

それがある時、いきなりものすごい規模の新社屋を建て、目を疑うような最新設備を導入された。
仕事の依頼と合わせ、一度見に来てくださいとご招待いただき、行ってみて正直驚いた。
スケールも設備の先進性も競合他社を大きくリードしていたと思う。少なくとも私がいた会社とは
比べ物にならない。
一体どうやってこれほどのものを構える資金を調達したのだろう?
製造部門を持たない会社でここまでの規模が必要なのか?
この設備を稼働させ続ける仕事量というのは、一体どれほどのものだろう…?
想像するのが難しいほどだった。

なので、この会社は私の中ではますます不思議な会社になったわけだが、
同時に、かつてはいい印象の無かった会社ではあるが、仲良くしていて…、
表現が適切かどうかは微妙だが、少なくとも邪険な扱いはしないでいて良かったと思った。
世の中、何がどうなるかわからない…。これからも仲良くさせていただこう…。
そう思って愛想よく話を聞いた。



画像はその時に依頼されて描いたコンパクトカー(トヨタでいえばPASSOあたりのクラスで、
もっとうんと安い)のアイディアラフスケッチ。エクステリア、インテリアともに2案ずつ。
エクステリアはなるべくパーツを共用して2Boxと3Boxを作り分け。
という内容で、まずはラフスケッチ、それをものすごい短期間で3Dに仕上げてレンダリング…、
という作業をやらなければならず、この時は本当に文字通り、寝る時間もとらずに何日か作業した。
間違いなく独立してから最もきつく、ひどく消耗した。
インテリアはともかく、エクステリアは、何とか3Dの形にするのが精いっぱいで、とても納得のいく
ものには出来ず、実に不本意であった。あまりに工期が短過ぎた…。

ラフスケッチの段階ではとても喜んでくれていて、これならすごくいいのが出来そうな気がする
とのことで、私も結構気に入っていたのだが…、それをさらにカッコ良く見せるべきCGレンダが
全く冴えなかった。あんまり良くないな…と思いながら作業を終えなければならない、
実につらかった。体もへとへとでつらかった…。
結局、そのプロジェクトは、メーカーの本社案に負けてしまった。
今では昔話のひとつとはいえ、苦い思い出のひとつだ。

そして、この“不思議な会社”の倒産で私はクライアントを一つ失った。
会社の能力を大幅に上回る先行投資をしてしまった事と、この頃の世界的な不景気が
重なってのことと思う。賭けに出て負けたといえばそれまでか。
この会社に対して私と同じようなこと(不思議さ)を感じていた人は少なくなかったようで、
皆さん異口同音に、やはりというか、なるべくしてというか、そのように感じたようだ。
しょうがないことなのかとは思うが、残念である。
あのすばらしい設備がどうなったのか、ずっと気になっている…。

他にもなぜ成り立っているのかわからないような(いつもながら失礼千万とは思うが…)
“不思議な会社”が1、2社あるのだが、それらが私が知らないだけで、実は健全な体質、
そうであることを願ってやまない。

この頃の世界的な不景気で私のいる業界は本当に厳しい状況が続いたが、そんな中でも
堅実に実績を上げていた会社もある。そういうところは例外なく極めて高い能力を有し、
また、宣伝や営業活動を事実上ほとんどやっていなかったりする。
能力の高さ、アウトプットのクォリティで勝負していて、いわゆるハッタリめいたことは一切無し。
それでも、一度仕事を依頼すれば、たいていの場合、またお願いします、となって信頼を得る。
そしてそういうクライアントが離れない。こういう会社は本当に大したものだと思う。






もしもリーマンショックが無かったら、どうなっていたんだろう…。


2014年04月24日(木) No.1571 (CG、スケッチ、デジタルモデリング、仕事)
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