- - Diary & Essay with pics - -
南フランスのリッチマン Vol.3

写真はDetomaso PANTERA (デトマソ パンテーラ)
左がオリジナル。右は若干モディファイされたバージョン。

 リッチマン氏、これからは彼のことをオーナーと書かせて頂きます。
私と、同行のメカニック氏でそう呼んでいたので。

 オーナーの広々としたガレージで、フォーミュラ・ルノーとコブラ427を横目に、
私達はそれぞれのコンセプトカーの状態をチェックし、“世界巡業”でいたんだ各部を、
可能な範囲で修復していきます。 出張先、それも海外ですから、
もうどうしようもないというのも当然あるわけです。 そういうのは、もう、
だましだまし走らせるしかありません。 
 そうやって、初日はサーキットまでの1〜2kmをそーっと自走していきました。
プレス達は翌日から来ますので、今日は、自走してサーキットに行って、
やばそうなところがないか、様子を見て終わりです。

 すると、途中から、結構大きな音で、車がたくさん走っている音が聞こえます。
かなりかん高い音で、これはレーシングカーかな?と思っていると、
サーキットのほうから、1台、また1台と、フルカウリングのバイクが来ます。
それらはレーサーレプリカだったり、本物のレーサーだったり、色々でした。
あれ、今日は走行会でもやってるのかな?と思ったのですが、
(サーキットには、誰でも開けられるような簡単なゲートはありますが)
出入りを見る人がいるところは無く、皆さん勝手に出入りしています。
一体どうやって、この人達を管理しているんだろう? と思いました。

 コースに着くと、そこはプライベート・サーキットというには、ずいぶん立派な規模で、
同行メカニック氏によると、日本でいうと筑波サーキット並みか、やや広いとのこと。
(私は、冨士と鈴鹿しか行ったことがなく、筑波はわかりません。)
沢山のレーシング・レプリカと、ほんとのレーサーが混じって、皆さん結構なペースで、
気持ち良さそうに走っています。

 そして、しばらくして、先ほどの疑問、どうやって管理しているのか?は、消えます。
そんなことは心配無用でした。 そうです、そんなこと、していないんです。
私達が翌日から予定しているイベントのように、ここを貸切にするようなことでもない限り、
こうして、走りたい人達に開放しているということです。 オーナーも一緒に走ります。
安全性とか、そういう小難しいことは関係ないようです。
どこかの国のように、変にガキ扱いされるように、細かく管理されるんではなくて、
大人がみんな、それぞれの責任と腕で、自分のマシンの走りを楽しむわけです。
オーナーもオーナーで、これで稼ぐ必要など全然ないので、これでいいじゃん、
というわけです。 うぅーむ、まいりました。^^;

 実際、しばらく後で、オーナーは、お友達と思しき初老のカッコイイ紳士と共に、
赤いオリジナル・パンテーラで現れ、さっそうとコースイン。カッコ良く10数週ラップして、
ご機嫌なエキゾーストノートを残して、夕焼けの中を帰っていきました。
 見た目は非常に美しく、いわばミントコンディションに保たれたオリジナルに見えますが、
どうやら、玄人風の渋いモディファイがなされているであろうことは、心臓である、
アメリカンV8が、やたらきれいに回っていることなどから伺えました。 ええなぁ。^^
Date: 2005/01/27(木) No.90
記入者ash [E-Mail]

ash  E-Mail  2005/01/27/15:36:59 No.91
パンテーラについて少し追加。

この種のスーパーカーの中にあって、
やや、“まがい物”扱いされがちなパンテーラですが、
そのほとんどの理由は、アメリカ車から流用されたエンジンにあります。
 ただ排気量がでかいだけで、デロデロ言ってて、ラフでがさつで、
ろくに回りもしない。低速トルクはあるが、高回転までまわらないので、
最高出力もたかが知れている。そう思われている、アメリカンV8エンジン。
それは半分くらい当たっています。
 でも、メカニカルレイアウトを見れば、それがかなりのレベルで、
まじめに考えられた、ある種理想主義的なものであることがわかります。
当時の最高峰のひとつ、フェラーリBBなど、まやかしに見えるほどです。
デトマソの一連の車は、そのブランドイメージである、やや、
やくざな雰囲気とは違い、基本的なレイアウトは、かなりまともで、
まじめなものです。
 ただ残念なことに、細部のつめが甘いのと(これは他のスーパーカーも
同じですが)、当時は、サスペンション形式がプッシュロッドやプルロッドを
使ったものではない、量産車(これをそういっていいかは微妙だが)として
コンベンショナルなものなので、いかんせん、シャシー自体の剛性が、
決して高くないことです。

 デトマソの名誉のために言えば、このシャシー最大ともいえる問題は、
後々のプロトタイプ、シュバスコや、ごくわずかな生産数で終わってしまった
グアラなどで、フォーミュラマシンもかくやというほどの超ロングアームの、
プッシュロッド/プルロッドを備えた、いわゆるインボードタイプの
サスペンションとなり、ようやく、同社がかたくなに守り続けた独特の形式、
バックボーンフレームの良さを存分に発揮します。
でも、それはあまりに遅すぎる、悲しみのデビューとなってしまいました。



+ Site map +

++ Top page ++
[TOP]
shiromuku(u3)DIARY version 2.15