ASH INSTITUTE Blog

僕が全部責任持ちます



「僕が全部責任持ちますから、それで進めてください。」
30代とおぼしき彼はそう言って、納期を控えて切羽詰まった状況の中、
外注の私達が困らないように指示を出してくれました。

1999年だから、もう13年も前のことになります。
その頃私はあるデザイン会社にいて、自動車メーカーがモーターショーに出品する
コンセプトカーの製作を請け負い、その製作全般の取りまとめをやっていました。
その時は秋に開催される東京モーターショーに向けて、各メーカーさんから
何台かの製作依頼を受けていて、これもその中の1台でした。

納期は迫るのになかなか具体的な指示を出さずに(出せずに)、文句だけは言う。
打ち合わせと称して、大人数で押しかけ、延々と文句をつけ、私達の作業時間を奪う。
こちらから解決策を提案しても、それに対して明確な判断、指示ができない。
なぜかというと、責任を取らされるのが嫌だからです。
指示を出してしまって、それにしたがって車が作られ、
後日それを見た他の人から文句が出た時、
“これ誰が指示したの?” となったら困るからです。
大きな(大きくなくてもかな)組織ではしばしばみられる事です。

コンセプトカーなどは、製作途中で何回もチェックが入ります。
ひどい場合はチェックのたびにこういう事が起こって、どんどん作業日数が削られ、
ひいては完成品質に甚大な影響を及ぼし、結果、関わった多くの人が不幸に…。 
などということも起こりえるわけです。
実際に私が関わっていた他のプロジェクトではそういう事が何回かありました。
そういう傾向の会社が2つほど、もっと悪いのがもう1社…、ありました。

でも、この彼は違いました。
みんな困っている時に、こちらから提案したギリギリの解決策に理解を示し、
ちゃんと明確な指示を出して、言った言葉が冒頭の言葉です。
この仕事をしていて、なかなか聞く機会の無い言葉です。
いつも低姿勢でほがらか、それでいてこういう時はきちんと決断する。それも素早く。
プロジェクトリーダーはこうあるべきです。ああ、すがすがしい。
この人に恥をかかせるようなことをしてはいけない。
そういうふうに思えて、モチベーションも上がります。

実質このプロジェクトは彼が仕切っていて、外注(私達の会社)の管理もしていましたが、
まだ管理職的な肩書は持っていなかったと思います。
こういう人がいる会社はいい。きっとこの人は出世するだろうな。そうあって欲しい。
そう思いました。

その彼と13年ぶり(私が独立してから初めて)に電話したのですが、
今は二つの部署を兼務する部長になっていました。
多忙ですぐには捕まらなかったのですが、応対してくれた女性から聞きました。
私は嬉しい気持ちになり、安心しました。
その後彼のほうから電話をもらい、ようやく久しぶりに話せたのですが、
相変わらずほがらかで、やっぱり仕事が速かったです。
こういう人がちゃんと出世する健全な会社だから、業績もずっといいんだと思います。
2012年04月24日(火) No.67 (CG、スケッチ、デジタルモデリング、仕事)
Comment(2) Trackback(0)

この記事へのコメント

記入者ash 2012/04/25/11:53:18 No.69
■マミ さん
そうですそうです、まさにマミさんに何度もお茶運んでもらってた頃の話です。(笑)
ほんとに忙しい時は会社の床がみんなの寝床になってましたね。^ー^;
マミさんには、あの過酷な環境の中で本当に良くしていただきました。感謝です。
私もあの時の経験が今の仕事のほとんどを支えていることになりますので、
色々ありはしましたが…、M社長と会社にはいくら感謝してもしきれません。
厳しくてつらいこともいっぱいでしたけど、楽しかったですね。^ー^

そうなんです、おっしゃる通り、神様はちゃんと見てくれたようです。
この彼は、私が一人で最初に彼の会社に営業に行った時から、初めて会う私の事を
すごく歓待してくれて、たくさんの人を紹介してくれて、しばらくしてちゃんと仕事も
出してくれました。それも、私達の会社が最も得意とする内容のものでした。

私が昨日、久しぶりに行った時もデザインの担当者と会わせてくれて、先につながる
いい話し合いができました。こういう人と知り合いになれて本当に良かったと思います。
彼は今、国産車でぶっちぎりに一番高額な超高級スポーツカーの新素材ボディ
(最も厄介で、肝心なところのひとつ)を担当しています。

>居るべき場所にその方は居られるのですね。
その通りだと思います。
私に関しては…、いなかの山の上のほうでタヌキやキジの出る、いなかもんに
ふさわしいところ、という意味ではまさにその通りだと思います。(;^ー^)ノ


記入者マミ 2012/04/25/10:18:58 No.68
それは、私がASHさんと一緒に働かせてもらっている頃かしら???
そう言えばあの頃、会議中お茶を何度運んだか(笑)

モーターショーの時はみんな、忙しそうで寝ていなさそうで、朝私が出勤すると良く床で寝ていましたね。
あのころ、みんなにあーして、こーしてと何時も言っていた記憶があります。
もっと、もっと、やさしく接してあげていれば良かったなぁと反省します。

しかし、会社勤めの中で一番色々チャレンジさせてもらい楽しい経験でした。

やはり神様はちゃんと見てくれていますね♪
居るべき場所にその方は居られるのですね。
もちろん、ASHさんもそのひとりだと、私は思います。

それにくらべて、なにやってんだか私は・・・(涙でます)

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