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クアトロポルテのインテリア



この世代のクアトロポルテはインテリアに革とウッドがふんだんに使われていることで
有名で、これをゴージャスだとか職人芸の極みみたいなことを言って、持ち上げたり、
ありがたがったり、中にはそこがこの車の最大の魅力だーなんていう人もいる。
ジャーナリストにも一般のユーザーにもそういう人がいるのだが…、
実際のところはいいばかりでなど無い。
マセラティはこうするしかなかったのだろうと思う。 そのことを書いてみる。

目につく表革部分は全て本物のレザーで、スエードっぽいところはアルカンターラ。
シート全席、ダッシュボード、メーターナセル、センターコンソール、ドアトリム、
ルーフトリム、ピラートリム、リヤトレイ…、などなど、とにかく目に見えるところは全て
革とウッドパネルで覆われている。フロントシートのヘッドレストのステーまで表革で
チューブ状にカバーされていて、ちょっとバカバカしいくらいだ。

インテリアカラーは何色か設定されていたのだが、マグノリア(暖色系のオフホワイト:
個人的にとても好き)とか、淡いベージュ(うちのはこれ)が多い。これがまた明るくて
上品というか、非日常的というか、そういう雰囲気をかもしてくれて大層よろしいのだが…、
ダッシュボードの上面がフロントウインドーに反射して肝心の前方視界の下半分くらいが
いつもぼーっとかすんで見える。 ( -`_´-)…
普通はこんなおバカなことにならないように、ダッシュボード上面は黒っぽくするか
それに近いダークカラーにするのがセオリーなのだが、そんなことお構いなしである。
だから、私はこの車を運転するときは必ず偏光レンズ入りのサングラスをかけている。

ウッドパネルなどは、ツヤツヤして実にいい雰囲気だ。 あくまで状態がいい間は。
これらにはご丁寧なことに全て本物のブライヤーウッド(柄が複雑で高級感があるとされる)
などが使われ、決して金属や樹脂の芯材を挟んだ合板に精巧な転写プリントをしたような
高度な工業製品(他のほとんどのみなさんのスタンダード:寸法精度・耐久性抜群、
メンテナンスフリー)などではない。
だから、平気で退色するわ白濁するわ、固定のために裏側に残した突起部がポロッと
とれたりする。木製のおもちゃの一部が欠けるような状態を想像していただきたい。
エアコンのスイッチパネルなど、これが原因で、操作しようとした途端、パネル全体が
下に落ち込み、スイッチがプッシュできなくなったりするそうだ。 (;´Д`)

ステアリングは当然のようにウッドなのだが、ただウッドでは気が済まなかったらしく、
リムというかグリップ部分にダボみたいな細工を全周に施して、更に小さなエンブレムを
埋め込んだりと、実にめんどうくさいことをしている。
まぁ、こういうところとか、ステアリングコラムスイッチまで同じウッドで出来ているのは、
いい意味で凝っていて、これはいいかなと思うのだが…。

うちのクアトロポルテはいわゆる中期型で、ただでさえ革とウッドだらけのこの型の中でも
最もウッドパネル使用率が高く、それはメーターパネルの中にまで及ぶ。
もうなんつうか、やり過ぎでうっとうしいレベルである…。 (;´ω`)

サンバイザーなども他の箇所同様に本革でくるんであるので、いい感じというか、
妙な感じに厚みがあって、天井のくぼみにおさまりきらず、いつも少し浮いている。(笑)


マセラティが倒産しそうになりながらもこんな手間のかかる工作をした理由は、
単に高級車としての演出のため、高額な価格を正当化するため、…ではない。
こうするしか彼らには手段が無かった、というのが真実に近い状況説明だと思う。
普通の量産車はインテリアパーツの多くをインジェクション成形とかその手の製法
(製品単価はうんと安くなるが成形型の製作や開発全般にかかる費用がケタ違い
に大きい:2ケタくらい違いかねない)とするのだが、マセラティにはそんな開発費は
出せなくて、FRPを手貼りするような猛烈なローテクで形を作り、それに手縫い
(さすがに指と針ではなくてミシンだろうが)で仕上げた本革を貼ることで、なんとか
体裁を整えたという事だろう。ウッドパネルの件も、インジェクション等の成形品は
あきらめ、多くいる木工職人を(安く)使って全部本物の木でやっつけたと…。
ま、ステアリングなんかは、サービスで凝ったものを作っときました、っていう感じで
悪い気はしないが…、職人があぶれてたのか?(←失礼千万 …なのだが、実際に、
このすぐ後に行われたマイナーチェンジ:フェラーリのクオリティコントロールという名の
コストダウン大号令で普通のあっさりしたウッドステアリングになってしまい、ファンを
がっかりさせた)

ドアトリムの平らなところなんて、分解してみると(いくつかの理由で必要に迫られて
自分でやった)、ただのアルミ板を切りだしたもの(普通に傷がいっぱいある)に、
薄いスポンジシートをつけたアルカンターラを普通の接着剤で貼っただけのものを、
現物合わせで穴あけして、タッピングでグリグリ留めただけのものだった。
更にそのアルミ板には、油性マジックで作業のための記号とおぼしきアルファベットと
数字が1文字ずつ、手書きで乱暴にでかでかと書かれていて笑った。

しかし、そんな成り立ちであるということがわかって、それでもなお…、
全体としては魅力的で、他には代え難いと思わせるのだから、
このデザインの力は大きいと再認識させられる。
もっとも、私の場合インテリアよりもエクステリアのほうが大好きなのだが。
2012年04月02日(月) No.34 (車(マセラティ・クアトロポルテ、他))
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